京都-Kyoto-
「…何かしたいなぁ…」
大学3年生を目前にした春休み、私は何となくそんな気持ちでいた。
1,2年生はよさこいを頑張ったし、引退してからはバイトも始めたし、
それなりに毎日やる事はあるんだけど、何か足りない。
大学生活を振り返った時に、これ!と言える思い出がほしい。
「そうだ、一人旅しよう!」
何となく、前から一人旅をしてみたいな〜とは思っていて、
バイトが決まるまでダラダラしていた夏休みには、母にも「一人旅でもすれば?」と言われた。
私の性格的にも、一人旅って合ってる気がする。
面倒くさがりの性格だから、なかなか行動に移せなかったけど、今はインターネットで何でも調べられるしな〜。
よし、行くか。
…どこへ行こう?
日本列島を頭に思い浮かべた時、真っ先に浮かんだのは、京都だった。
もともと寺とか仏像とかが好きな事に加えて、高校の修学旅行で行っているはずが、全く記憶がない事もあり、
今度はしっかり勉強してから臨もう、というわけで、行き先は意外にすんなり決まった。
行くと決まれば、計画だ。
日程は4日間。往復の飛行機と、ビジネスホテルがセットになっているものを、旅行会社で頼む。
続いて、行きたい寺をピックアップし、そこまでの行き方を調べる。
寺1つ1つの入場料や、バスの番号までしっかりメモに控え、準備万端で3月3日6時半の始発に乗って、私は北海道を発った。
★★★3月3日★★★
行きの飛行機は爆睡し、目が覚めると、伊丹空港。
そこからリムジンバスで、京都駅へ向かう。
高速道路の表示の地名が知らないものばかりで、遠くに来たんだな、と実感する。
京都駅が予想外にでかく、ウロウロウロウロひたすら迷うが、バス乗り場を見つけてからは、快調に予定が進む。
まずは二条城。
『当時の日本にいなかったため、絵師の想像で描かれたトラやヒョウ』の屏風とか、
『万が一に備えて、護衛の家来が隠れる壁』とか、
『厚さ35cmの1枚板を裏表から彫って、両面の絵が違う“透かし絵”』とか、
本当に「エキゾチック・ジャパーン!!!」と叫びたくなるくらい私の胸を打つものばかり並んでおり、
二条城は、グルッと1周して最初の場所に戻れるような観覧ルートになっているのだが、
1周では飽き足らず、2周し、3周目はオーストラリアからの団体が来ていたので、英語ガイドに耳を澄ませ、
何言ってるのかさっぱりわからなくて飽きてきたので、その団体客に声かけて交流図ってみたくらいにして、
二条城をとにかく隅々まで堪能して帰って来た。
今思い出しても、また行きたいなぁ。
二条城、お勧めです。
(左)城の裏の庭園。 (中)まだ桜には早かったが、梅が少し咲いていた。 (右)城内は撮影禁止の為、外観のみ。
二条城の後は、当時映画で盛り上がっていた、安倍晴明の晴明神社へ向かった。
二条城とは裏腹に、ここはあまりに観光化され過ぎていて、しかも工事中で、全然面白くなかった。
(左)晴明の操る「識神」が住むという一条戻橋。 (右)工事中だった晴明神社。
二条城で時間を取り過ぎた分を晴明神社で取り返し、私は続いて東寺へ向かった。
東寺は、以前に母の里帰りで大阪に来た際に、家族で来た事があったのだが、
幼心なりにも東寺の趣には心惹かれるものがあり、数年たった今ではどうかと思って行ってみたが、やっぱり良かった。
食堂・講堂・金堂が一直線に並ぶ伽藍配置や、夕暮れを背景に聳え立つ五重塔。
また、講堂の中の仏像の迫力がすごかった。
無意識のうちに手を合わせてしまうというか、思わず「ごめんなさい」と謝ってしまいそうというか、
しかしまぁあそこの厳かな雰囲気は、本当に良かった。
(左)東寺の五重塔。 (右)東寺。門の外から。
東寺では、野良猫たちに煮干をやるお婆さんや、ダックスフントを散歩させるお爺さんと話した。
一人で来ると、こうやってちょっと思い切った交流が出来るのがいいね…♪
そういえば、二条城で見かけて、その後東寺でもまた見かけて、その後京都駅でもまたまた見かけた人がいた。
今でも忘れない、私と同じルコックの靴をはいたお兄さん。
硬派な感じの人で、一人熱心に仏像を見て歩いていた。
観光客にはよくあるルートなのかもしれないけど、
「これは運命!」と思いつつ、結局モジモジして最後まで声をかけられなかったのは、
今でも心残りで、思い出してしまうなぁ〜。
★★★3月4日★★★
翌日は、奈良まで足を伸ばす事にした。
まずは法隆寺。
高校の修学旅行で訪れているのだが、私は全く覚えていない。
高いお金払って行ったのにもったいないよなぁ…と思いつつ、改めてむかう。
途中道に迷い、歩き過ぎて足がガクガクになりつつも、無事到着。
ここで私が絶対見たかったのが、『玉虫厨子』。
日本史の資料集に載っていた、玉虫何百匹分もの羽を貼って作った厨子。
虫の羽を使うという発想に驚いたと共に、よく「玉虫色の」と言う表現はあるが、
実際どんな色なのか、強いインパクトがあったのだ。
資料館は、平日なせいもあり、人はほとんどいなかった。
程なく私は玉虫厨子を発見した。
もう今は、玉虫の羽はほとんど全部はがれ落ちてしまっていると聞いていたが、
逆に言うと、ちょっとは残ってるって事だ。
「どのへんに羽が残ってるのかなぁ…」
ガラスケースの向こうの厨子に目を凝らしていると、資料館の係のおじさんが寄ってきた。
羽がどこに残っているのか聞いてみると、おじさんは、館の奥から懐中電灯を持ってきて、
しかもガラスケースを特別にライトアップしてくれた。
すると、羽が綺麗に浮かび上がって見えた。
私は、もちろんこうして羽が見られた事も嬉しかったが、
それ以上に、私一人のためにこうして親切にしてくれたおじさんの気持ちが嬉しくて、
「これは絶対忘れない!」と、玉虫厨子を見つめた。
(左)玉虫厨子参考図。 (中)法隆寺へ行く途中で見つけたファミマ。景観に合わせて瓦屋根。(右)六角形の造りの夢殿。
法隆寺のお隣にある中宮寺も覗いて、続く東大寺へ向かう。
東大寺は、階段の段差1つを取っても大きくて、大仏だけでなく、全てのスケールの大きさを感じる。
大仏殿で拝んだ後、前庭で、シカに煎餅をやってひと休みしたのだが、
何せすごい量のシカが寄ってきて、私は一人ハイジのようになってしまった。
(左)法隆寺の隣にある中宮寺。意外に中にある絵が良かった。(中)私をハイジにしたシカ達。 (右)大仏殿。本当に撮り方ヘタ過ぎ…。
東大寺を見ているうちに、なんと雪が降り出した。
私は、3月の本州なんてもう暖かいもんだと思って薄着で来たのだが、本気で寒い。
薄着のせいだけじゃない。雪が降るって事は、普通に寒いって事ですよ。
手持ちの煎餅も尽き、シカにしばらく追われながらも、私は東大寺を後にし、最後に平等院鳳凰堂へ向かった。
寒くてあまり外にいられなかったのだが、とりあえず10円玉を横に並べて眺める。
隣接の資料館で鳳凰堂の歴史を見ると、なんと鳳凰堂って昔は赤色だったんだそうで。
皆さん知ってました?
何となく、無意識のうちに、10円玉のあの色以外、想像が出来なかった。
けど、確か東大寺も、他にも昔赤かったお寺ってたくさんあるんじゃないかなぁ。
中国の影響なんだろうなぁ。
色って、イメージをガラッと変える。
例えば、恐竜だって、骨でしか見つかってないわけだから、恐竜の絵って全部想像なわけでしょう。
もし、どこかで恐竜の皮膚が見つかって、「昔の恐竜はピンクでした」とかわかったら、
絶対イメージ変わるじゃないですか!
…まぁそれはいいんですが。鳳凰堂が赤だったっていうのは、私にはちょっとした衝撃だった。
(上)平等院鳳凰堂。左右にグーッと広かった。この時は工事中だった。また行ってゆっくり見たいなぁ。
本当はもっとゆっくり見たかったのだが、何せ滅多に自動販売機に近寄らない私がホットのお茶を買ってしまうほどの寒さで、
お腹が下り始めた事もあり、夕日が落ちると共に、京都へと戻った。
そして、この晩私は出発前に予約していた「美女と野獣」のミュージカルを観に行った。
以前に友人と東京を旅行した際に、ライオンキングを観に行き、メチャメチャ感動してしまった私は、
京都でしか見られない「美女と野獣」をぜひ見ておこうと、ちょっと奮発してみたのだ。
どうだったかというと、やはり規模も内容も、ライオンキングにはかなわない気がしたが、
もともと美女と野獣の映画が好きだった事もあって、観てよかったな♪と素直に思えた。
でも、美女役のお姉さんの歌が、高くなるごとに半音ずつ狂っていってる気がしたのはどうなんだろう。
★★★3月5日★★★
この日は、朝早く起きて、銀閣寺へ向かった。
早朝の銀閣寺は、まだ人も少なく、空気も澄んでいて、金閣寺のようなゴージャスさはないけれど、
侘び寂びの趣があって、なんだか「これを感じられる日本人でよかったな」と思えた。
銀閣寺は、早朝に行く事をお勧めします。「銀閣寺はつとめて」です。(わかるかな?)
珍しくうまく撮れた2枚。(左)丘の上から撮った銀閣寺。 (右)決して派手ではないけど、なんか味があって好き。
続く平安神宮は、奥にある庭園が有名なのだが、私の行った時は、まだ桜には早い季節で、
少しだけ梅の花が咲いていたけれど、全体的に茶色で、ちょっと寂しかった。
きっとあと1ヶ月も後に行けば、桜が満開で、素敵な庭園が見れたんだろうなぁ…。
(左)平安神宮正面。広かったのは表現出来てるけど、あまりに切れ過ぎ…。(中・右)庭園。あと1ヶ月遅ければ…。
続いて私は清水寺へ向かった。
とりあえず知名度的に外せないだろうと思って一応行ってみたが、正直あまり興味はなくて、
実際観光客でごった返していて、有名な釘の使われていないという舞台を見て、
何か写ると嫌なので写真は撮らず、隣の地主神社へ向かった。
地主神社は、縁結びの神社という事で、彼氏とお揃いになるように、色違いの2つのお守りを買った。
そしてついでに「恋みくじ」を引いてみたのだが、これが末吉という
何とも微妙な結果で、
平安神宮に続きイマイチ波に乗れぬまま、地主神社を後にして、三十三間堂へ向かった。
(左)地主神社。こんな立派になったのはつい最近らしい。
(中)こっちならではの狭い路地が撮りたかったのに、見る人みんなに言われるのは、「井筒薬品撮りたかったの?」
(右)これは狭い路地が表現できてますか…?
三十三間堂は、私のお気に入りの1つで、今回も絶対訪れたいと思っていた。
三十三間堂は、エライ数の仏像が安置されているので、よく「どれか一体は自分に似てるのがある」と言うが、
私は基本が仏顔なので、全体的に似ているな、という印象で見てまわった。
一体の仏像から21本の手が出ていて、その1本1本が違う道具を持っていたり、
指先の柔らかさなど、日本ならではの細やかな造りを眺めながら、私は仏と一体化していた。
それから私の向かった先は、養源院。
とある城で戦いがあり、その城の廊下の板などを天井に使っているので、戦中廊下で倒れた武士の血の痕が見えるのだ。
ナゼそんなものを観に行くって、そりゃ物好きと言うしかないんですけど、
その割に小心者なので、1人で入る勇気もなく、5人ほどのグループが中に入ったのを見計らって、私も入った。
中の住職さんなのか説明ガイドなのかわからない人が、歴史について説明し、
血の痕のわかりやすい場所を棒で示してくれた。
手の形などがわかるところもあり、普通に怖かったので、見終わってすぐに撤退した。
(左)三十三間堂の門。 (右)養源院の門。
…実は、今日の予定はこれで全部だったのだが、あまりにスムーズに進みすぎて、時はまだ正午。
偶然二条城の壁画特別展がやっているというポスターを見つけ、国立博物館へ向かう。
それでも時間が余るので八坂神社と、西本願寺も覗き、
それでも時間が余るので風俗博物館へ向かった。
風俗博物館は、ガイドブックにもあまり載っていないようなレアな場所で、
実際ビルの一角にある、本当に小さなものだったのだが、
源氏物語の生活をジオラマで再現したところで、
平等院鳳凰堂の近くにある「源氏物語ミュージアム」を寒さのあまり断念した私にとって、行くべき場所であった。
(風俗=エロいの想像した者、死刑!)
そしてこれまたなかなかいいところで、丁度源氏物語の本を読んでいた私が右脳を駆使して想像の世界に入るには、
これ以上ないセッティングの整った場所でした。入場料50円くらいだったしね。
(左)八坂神社。中は屋台などもあって結構にぎわっていた。(右)西本願寺。ここも工事中だったなぁ…。
そして、この日のメインディッシュがいよいよやって来たわけです。
正和君とのご対面♪
正和については、私のHPのFRIENDSのところにも少し載せているが、
もともとはインターネットのサイトで出会った私たち。
「出会い系?!」と今なら引かれてしまいそうだけど、当時は一家に一台ようやくパソコンが普及し始めた頃で、
そのサイトも、純粋な“友達作りサイト”。
「高校野球」というキーワードがきっかけでメールをやり取りするようになり、
今回京都出身の正和に、京都の見所を尋ねるメールをした事がきっかけで、会う事になった。
プリクラを見せてもらったり、電話をしたりで相手の事はよく知っているつもりだが、
ちょっとロンドンハーツのブラックメールとかがよぎる。
JRの中で何度も鏡を見て髪型を直し、服を整え。
正和は、ちょっと遅れて待ち合わせの駅に現れた。
一応初対面だけど、すごく気さくで話しやすくて、私の緊張はすぐに解けた。
時間も時間だったので、早速近くの飲み屋に入る。
漢字のお酒ばっかり頼んで、たくさん飲みながら、今までの色々について話す。
顔を合わせるのこそ初めてでも、かれこれ付き合いは4年目。
色んな思い出話に花を咲かせ、終電の時間も忘れて深夜まで話し込んだ。
結局正和の家に泊めてもらった私は、若干二日酔い気味だったが、残る寺を見るため、朝早く家を出た。
神戸を出て私が向かうのは、金閣寺。
天気も良く、金閣寺は池の水面にも映って、2倍綺麗だった。
…けど私は銀閣寺の方が好きだな〜。…なんてツウぶった事言ってみたりして。
(上)数少ないうまく撮れた写真!
金閣寺から、続いて向かうのは龍安寺。
ここは、なんだっけ、砂で作った庭…えーと…枯山水!で有名なところ。
これは、修行を積んだお坊さんじゃないと、美しく作るのは難しいんだそうだ。
何せ、要は巨大なフォークみたいので庭に模様を描くわけだけど、
頭の中に少しでも雑念があると、線が曲がってしまったり、その雑念が現れてしまうらしい。
雑念で生きている私には、美しい枯山水の庭を造るのは不可能に近そうだ。
庭には、大小15個の石が散らばっており、このバランスも絶妙らしい。
あいにく芸術センスの欠けている私にはよくわからなかったが、
人によって、その石が何に見えるか違うとかで、庭を眺められる縁側にはたくさんの人が腰かけて庭を見つめていた。
私も庭を眺めていたが、特に何に見えるわけでもなく、相当疎いらしい。
隣には外国人の夫婦が座っており、石を「アイン、ツバイ…」と数えていた。
ドイツ語を履修していた私は、「フフフ、ドイツ人だな、見破ったわよ…」と一人無意味に勝ち誇っていた。
(上)枯山水の一角。庭全体を収めるのは無理だった。
龍安寺を以って、私の今回の旅は終了だ。
ホテルに戻って荷物をまとめ、関空行きのリムジンバスに乗る。
まだ雪の残る北海道に、日の落ちた頃無事到着し、こうして私の
二条城・晴明神社・東寺・法隆寺・中宮寺・東大寺・平等院・銀閣寺・平安神宮・清水寺・地主神社・
三十三間堂・養源院・八坂神社・西本願寺・金閣寺・龍安寺、加えて博物館やミュージカル、神戸という
盛りだくさんの私の初・一人旅は幕を閉じたのでありました。
…「○○に行った。どうだった。××へ行った。どうだった。」というとても面白くない旅行記ですね。
しかも、写真がデジカメじゃないせいで(私の腕がないせいで)あまりに苦しい。
ただでさえ、仏像とか寺の内部は撮影禁止が多いから、写真で伝えるのが難しいのに…。
とにかく、読んでいただいてありがとうございました。
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